〈2015.01.11,12 エクアドル・キト〉
兆候はあった。
コロンビアのグアタペにいたときにノドに違和感を感じ始めていた。
風邪かな?
いつもの流れはノドの痛みの後に咳が始まり、熱が出る。
長くても5日ほどで完治するのが普通。
予想通り咳が出始めた。
直近のメキシコにて風邪をひいたばかりなのになぁと思っていた。
寝てれば治るさ。
風邪なんて気合で治るし、実際それで治してきた。
しかし、今回はどうもおかしい。1週間経つのに悪化の一途。
熱が出て、体の自由が利かなくなり、咳に至っては呼吸が出来ないほど。
咳が頻発するせいで会話以前に腹筋痛いし、涙出るし・・・
こりゃ、やばい。
風邪じゃないんじゃないか?!
あらゆる可能性を考えて病院に行くことを決意。
キャッシュレスで診察を受けるため、保険会社に連絡。
幸いなことに宿から歩けるほどのクリニックを紹介してもらった。
保険証書とパスポートの持参を支持され、すぐに向かった。
到着するや否や。
警備「今日は日曜だ。診察はやってない。」
あり「いや、日本の保険会社に連絡済みだよ。緊急受付あるでしょ?!」
警備「そんなものはない。明日出直して来い!」
・・・
・・・泣いた。
身体をひきずって息も絶え絶えで辿り着いたのに、この仕打ち。
明日まで生きていられるかな。(大袈裟)
翌日。
幸運なことに(?)生きていたので、病院へ出直し!
受付に行くと、緊急窓口に誘導された。
緊急ってことは昨日も開いてたんじゃ…?という疑惑。
あり「ゴホッ。診察を…損保ジャパンのぉッゴホホ。キャッシュレス…」
受付「はぁ?損保ジャパン?んな会社と契約してないし。」
あり「いや…そんなはずは…ゴホッゴホッ…」
受付「帰って保険会社に確認しておくんだな!」
あり「・・・」
完全に心が折れた。
涙が溢れてきた。
隠す余裕もないくらい大量に。
つらい・・・もう無理。
このまま旅を辞めてしまおうかな・・・
旅の終結を本気で考えた。
中南米の治安を考えると毎日気を張っていなきゃいけないし、周りをどこまで信じていいのかも分からない。
アジア人だと後ろ指さされるのは日常茶飯事。あからさまにからかわれるのもうんざり。
それを避けようとうつむいている自分もいた。
あ、最近旅を楽しめてなかったかも。
こんな旅がしたかったんじゃない。
なんで旅してるんだろう・・・
日本だったらこんな思いもしなくていいのに。
日本だったら大好きな仲間と笑っていられるのに。
だけど、自分で決めたこと。
すごく頑固だから目的を達成してないのに帰国するなんてバツが悪い。
もう誰かが旅を辞めなさいと言ってくれたらいいのにって考えた。
もうドクターストップでも出てしまえばいいのにって考えた。
アフリカ行きのチケットなんて捨ててしまいたかった。
その時、ふっと目に入ったものがあった。
中に入っていたのはメッセージの寄せ書きと5円玉。
涙が止まらなかった。
みんなに会いたいよ。
だけど、まだ時期じゃない。
御守をくれた友達以外にもたくさんの仲間が応援してくれて笑顔で送り出してくれた旅。
一人じゃない、みんなと一緒に旅してたんだ。
だからこそ二度とないこの旅を大切にしなきゃって思えた。
出発前の気持ちを思い出し、各国の素晴らしい思い出が蘇った。
自然と涙がこぼれた。
凝り固まった心を各国でもらった温かい優しさが溶かしてくれたんだ。
やっぱり・・・
やっぱり、旅がしたいよ!
今までの出会い、まだ見ぬ出会いを繋げていきたい!
自分の夢だった「自分の旅」を実現したのに、好きなことを存分にできるのに楽しめないなんて愚かだ。
身体は重症だけど、気持ちが軽くなったので出かけることにした。
赤道記念碑まで。
前を向いて目を見て人と話している自分がいた。
知らない人と肩組んで「イイェーーイィ!!」って写真撮ってる陽気な自分がいた。
これだ!
笑ってるわ、自分。
うん、旅を続けよう。
そのためにもう一度病院に行くべきだ。
宿に戻って保険会社に連絡すると、「なんで昨日行かなかったんですか?お待ちになってますよ!」と頭を悩ます返信が。
頭を抱えながら病院に行き、聞き出した担当者の名前を告げると「少々お待ちを!」って。
やった!ついに通じた!
少々待つこと2時間半。
ようやく診察を受けることに。
間違いなく記されていた【英語対応可】との保険会社の情報はウソだった。
誰も英語話さないんだもん。
スペイン語を勉強しておいてよかったと感じた瞬間。
問診→放置→謎の呼吸器装着→放置→レントゲン→放置→血液検査で約2時間。
医師の診察結果は?!
「うーん。ノープロブレム!」
・・・(;゚Д゚)!!
あり「え?めっちゃプロブレムよ?死ぬかと思ってるのよ?呼吸困難よ?何か原因あるでしょ?お願い、病名付けて!」
医師「うーん・・・ノープロブレム。」
なんか逆に怖いんだけど・・・
まぁ、そういうなら旅続けるよ?
最終的に薬すら支給されず、要らないおみやげだけが手元に残った。
診察終えたところで重い症状は変わらないけど、笑えてきた。
ノープロブレムだもの。堂々と旅を続けよう!
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